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遺言(法律上「いごん」または一般的には「ゆいごん」)は、遺言を作る人(遺言者)が、自分の亡くなったあとの法律関係(財産・身分など)を一定の方式にしたがって定める、最終的な意思表示のことです。生存中であれば、自分の意思で自由に財産を処分できます。しかし、亡くなった後では、遺された家族は故人の意思を確かめることができません。遺言で「財産を誰に遺す」「認知したい子供がいる」などを書き遺しておくことができます。遺言の方式は法律で定められています(民法960条)。遺言で定めることができる内容も法律で決まっています。家庭裁判所に持ち込まれる相続争いの多くは、正式な遺言書がないためともいわれています。遺言は、遺産をめぐるトラブルを防ぐ最善の方法です。
また、借金がある場合でも、遺された家族が法的な手続(相続放棄)により借金の返済義務を負わなくてすむように、その内容を遺言というかたちで書き遺しておきたいものです。
遺言は、生存中であればいつでも何回でも変更(撤回)することができます(民法第1025条)。もちろん、変更(撤回)する場合も法律上の決まりを守らなければなりません。
①法定相続分とは異なる配分にしたい
②遺産(種類・金額)が多い
③配偶者の相続人が兄弟姉妹となる(子供がいない)
④相続人以外に財産を渡したい
⑤配偶者以外との間に子供がいる
など、遺言書を作成することを強くおすすめします。
遺言によって無償で他人に財産を与えることを「遺贈」といいます。
財産を受ける側の意思に関わりなく贈ることができますので、無償の契約である「贈与」とは法律上区別されています。
遺言によって被相続人の意思が明確に示されていれば、相続のトラブルの多くは防ぐことができます。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります(民法第964条)。包括遺贈は、相続財産を何%や何分の1というように割合で遺贈するものです。特定遺贈は、特定の遺産(不動産・動産・預金)を遺贈するものをいいます。また、包括遺贈を受けたものは、相続人と同じ立場となります。
遺言でできることは、法律で定められている以下の事項です。
(1)狭義の相続に関する事項
推定相続人の廃除・取消し
相続分の指定・指定の委託
特別受益の持戻しの免除
遺産分割方法の指定・指定の委託
遺産分割の禁止
共同相続人の担保責任の減免・加重
遺贈の減殺の順序・割合の指定
(2)遺産の処分に関する事項
遺贈
財団法人設立のための寄付行為
信託の設定
(3)身分上の事項
認知
未成年者の後見人の指定
後見監督人の指定
(4)遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定。指定の委託
(5)学説で認められている事項
祖先の祭祀主宰者の指定
生命保険金受取人の指定・変更
系譜(家系)・祭具・墳墓などの祭祀財産は遺産分割の対象となる相続財産ではありません。祭祀主催者が承継します。遺骨についても民法上の定めはありませんが、祭祀財産に準ずるものとされています。祭祀主催者は、被相続人が指定することで決まります。指定しない場合は、慣習に従うことになります(民法第897条1項)。慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所が定めることになります(民法第897条2項)。
祭祀財産を誰に承継するか前もって決めておきたい場合、遺言書で指定する方法があります。なお、公正証書遺言の場合は、手数料が加算されます。
民法では普通方式の遺言として、以下の3つを規定しています(民法第967条)。
自筆証書遺言・・・遺言者が、遺言内容の全文・日付・氏名を自分で書いた上で押印します。これらが欠けたものは無効となります。問題点としては、法律的に間違いのない文章を作成することが困難なことです。保管上の問題もあります。遺言執行の際には家庭裁判所で「検認手続」をしなければなりません。よく筆跡鑑定などで真実性が争われているのが、この遺言書です。
秘密証書遺言・・・遺言者が署名・押印した遺言書を封書にして公証人に提出します。この場合は自筆証書遺言と違い、本文は自筆でなくても構いません。やはりこの方式の遺言書も、内容の正確さの問題や検認手続の問題があります。現在は、あまり利用されていません。
公正証書遺言・・・証人2人以上の立会いのもと、遺言の内容を公証人に伝え、筆記し
てもらった上で読み聞かせてもらいます。その筆記に間違いがないことを確認した上で署名・押印します。この方式の遺言書が一番お勧めできるものです。
公正証書遺言以外の遺言は、遺言の執行前に家庭裁判所の「検認」を受けなければなりません。「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など「検認」の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
「検認」は、遺言の有効・無効を判断する手続ではありませんが、検認を受けないで遺言を執行した場合には過料に処されるので注意しなければなりません。
遺言書が出てきた場合、どうすればいいのかについて説明します。
遺言書は、封をされていてもいなくても家庭裁判所に提出して、検認手続きをしなければいけません。検認の申立ては、遺言書を保管していたか発見した相続人がする義務があります(検認請求義務者、民法第1004条1項)。相続人が遺言書を隠匿(隠して人の目に触れないようにする)すると相続欠格者となり、相続できなくなります(同第891条5項)。
検認の申立ては、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍、相続人全員の戸籍とともに遺言書検認申立書を相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に提出して行います。
家庭裁判所では、全相続人に検認指定日の通知をし、申立人および指定日に来た相続人の立会いの下、遺言書の開封を行います。遺言書を確認し、検認調書を作成します。
自筆証書遺言とは、全文を自筆で書く遺言のことです。作成上の注意点は
1.全文を自筆で書くこと(民法第968条1項)
2.題名を『遺言書』とする
3.作成年月日を書き、遺言者本人の署名をし、押印をすること(民法第968条1項)
4.相続財産を特定する
5.内容は明確に書くこと
(できれば遺言執行者を指定すること)
家族の同意を得る必要は全くありません。遺言による相続と似通った行為に死因贈与契約があります。この場合は、贈与者・受贈者の双方の同意により契約が成立します。しかし、遺言は渡す側(遺言者)と受け取る側(相続人または受遺者)との両者の同意は必要ではありません。遺言者の一方的意思で、作成できます。いわば、遺言者の単独行為となります。
しかし、相続が発生したとき、遺言書が相続人の一部もしくは全員が反対である内容であり、もめないために遺した遺言が逆にもめる原因になってしまうこともあります。そのようなことのないように、遺言では、公平で納得のいく内容で分割することを考えなければなりません。また、遺言書に分割内容の理由も付言事項で書くことも有効です。場合によっては、生前、本人の意思を伝えておくことも唐突とならないために必要です。
なお、遺言の内容に共同相続人全員が反対の場合、全員同意の遺産分割協議で違った内容の遺産分割にすることもできます。
自筆証書遺言は、遺言者本人のみで完結することができる方式であり、極めて簡便でお金もかかりません。
しかし、法定された内容に合致しない場合(無効となることもあります。)や遺留分を侵害した場合などがあった場合、遺言書を遺したにもかかわらず相続でトラブルとなることもあります。また、遺言書の存在に気づかない可能性もあります。発見された場合には、裁判所の検認手続きが必要となります。
一方、公正証書遺言は、
1.原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽変造の恐れがありません。
2.家庭裁判所における検認手続が不要です。
3.法律の専門家である公証人が作成しますので、内容に間違いがありません。
デメリットとしては、費用がかかります。また、2人の証人に遺言の内容が知られてしまうという問題もあります。ただし、証人については、業務上守秘義務のある行政書士等に依頼することによって、内容の外への流出を防ぐことができます。
公正証書遺言は、公証役場で手続きをします。下記の準備が整いましたら公証役場に予約をします。証人2名が立会いし、遺言者が遺言の内容を公証人に口述し、公証人がこの内容を筆記します。公証人が筆記したものを遺言者と証人に読み聞かせ又は、閲覧させて遺言者と証人が筆記の内容を承認し、これに署名押印します。公証人が正規の手続きによって遺言書が作成された旨を付記して署名押印すれば公正証書遺言ができます。公正証書遺言の原本は作成した公証役場に保管されます。謄本が遺言者に交付されます。遺言公正証書番号も決まります。
《用意するもの》
・遺言書(遺言書の案)
・遺言者本人の印鑑証明と印鑑証明の印(実印)
・遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
・法定相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票
・財産の内容を証明する資料(不動産の登記簿謄本、預金通帳など)
公証役場で公正証書遺言を作成するにはいくら費用がかかるか概要を説明します。公証役場に払う手数料は、政令で決められていて概要以下の通りです。
遺言の目的である財産の価額に応じて、財産の相続又は遺贈を受ける人ごと手数料が定められます。これらの手数料を合計して、遺言書全体の手数料をとなります。
目的財産の額
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで17,000円
2,000万円まで23,000円
5,000万円まで29,000円
1億円まで 43,000円
1億円を超える部分については
1億円を超え3億円まで 5000万円ごとに 13,000円
3億円を超え10億円まで 5000万円ごとに 11,000円
10億円を超える部分 5000万円ごとに 8,000円
がそれぞれ加算されます。
全体の財産が1億円以下の場合は、さらに11,000円が加算されます。
祭祀を司る人を指定する場合は、11,000円が加算されています。
遺言書は、法定遺言事項として法律的効果を生じる事項が明確に決められています。しかも、誤解を招くことのないように、明瞭で簡潔に表現することを求められます。したがってどうしても、無味乾燥となってしまいがちです。遺言書を読んでも、遺言者がどのような思いで遺言書を作ったのかは分からないものです。
そこで、法律的な効果は持たないものの、遺言者本人の思いを留めることが必要となります。そういった要求にこたえられるのが、法定外事項である付言事項です。
遺言書の末尾に付言事項を書くことで、遺言書の内容を決めた遺言者本人の気持ちを伝えることができます。また、家族が仲良く暮らしてほしい。みんなに公平な気持ちであることなどを書くことができます。なお、付言事項は遺言書のどこに書いてもいいのですが、遺言の内容が分かりずらくなるので、最後にまとめて書くことをお勧めします。
民法で規定されている遺言でできる財産処分行為は、相続分の指定および指定の委託(902条)・遺産分割方法の指定および指定の委託(※908条)・遺産分割禁止(908条)・遺贈(964条)です。
しかし、公正証書遺言でも一般的に頻繁に「○○銀行の預金については○○に相続させる」という文言が用いられています。
それでは、「相続させる遺言」は、民法で規定された遺言できる財産処分行為のどれあたるのでしょうか。
判例では、
最判平成3年4月19日: 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人死亡の時に直ちに当該遺産当該相続人に相続により承継される。遺産分割方法の指定および指定の委託(908条)である。
と解釈しました。
すなわち「○○銀行の預金については○○に相続させる」という遺言は、遺産分割方法の指定であり、被相続人が死亡後即時に指定された相続人に相続されることになります。
被相続人から生前、公正証書遺言を作成したと聞いていたが、正本が見つからない。この場合、どうすればいいのか。
公正証書遺言は、原本・正本・謄本が作成されます。原本は、公証役場に20年間保管されます。通常、正本は遺言執行者もしくは遺言執行を行う予定の相続人が保管し、謄本は遺言者が保管します。中には、遺言者が正本・謄本ともに保管することもあります。
公正証書遺言(秘密証書遺言も)は、昭和64年1月1日以降であれば全国どこの公証役場で作成されたものでもどこの公証役場からでも検索ができます。
生前の場合は、遺言者本人のみ検索ができます。遺言者の死後は、相続人であれば検索の依頼ができます。
依頼に際して必要な書類は、
被相続人が死亡した事実が確認できる戸籍謄本、相続人であることが分かる戸籍謄本、本人の証明などです。
遺言書を作った後、状況の変化等があり、変更もしくは撤回をしたいと思ったときどのようにすればいいでしょうか。また、変更等は一切できないものなのでしょうか。
民法第1022条に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部撤回することができる。」とあります。
遺言者は、一度作った遺言をいつでも撤回できます。
遺言の方式に従うということは、自筆証書遺言なら自筆証書遺言で、もしくは、公正証書遺言であれば公正証書遺言でというわけではなく、自発証書遺言を公正証書遺言で撤回することも、その逆もできます。遺言書の方式に従えばいいのです。
「撤回」とは、まだ発生していない遺言書の効力を将来に向かって効力を失わせるものです。
更に、撤回遺言以外に撤回擬制(法定撤回:撤回とみなせられる行為)があります。具体的には、
・前の遺言書の内容と抵触する異なる遺言書を作る。
・遺言書にある遺言と異なる行為をする。(相続するといっていた土地を売却した。預金を解約したなど。)
・遺言者が故意に自筆証書遺言を破棄する。
などです。
なお、撤回された遺言は、撤回が詐欺・強迫でされたもの、また撤回遺言を更に後の遺言で撤回することがない限り復活されません。
遺言は執行されなければ意味がありません。遺言の内容を実現するための手続を行う人を遺言執行者といいます。遺言執行者を指定しておけば、その遺言執行者が遺言の内容を実現してくれます。遺言執行者は、相続人でも第三者でもなれますが、信頼のできる相続人かあるいは行政書士などの専門家を指定しておくことをお勧めします。また、遺言執行者に対する報酬についても、遺言で定めておくことができます。
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。配偶者・子供・親・兄弟姉妹などが法定相続人の対象者です。法定相続分は、遺言がない場合に相続人がもらうことができる財産の割合(法定相続分)です。遺言がある場合は、遺言の内容が優先されます。
配偶者・・・相続人が配偶者しかいない場合は、全部の財産を相続します。他に相続人がいる場合でも最低2分の1(半分)は、相続することができます。
子供(第1順位)・・・配偶者がいる場合は2分の1、配偶者が死亡している場合は全部を相続します。子供が複数いる場合は、人数で割ることになります。
親(第2順位)・・・子供(被相続人の子供)がいる場合、親(被相続人の親、子供から見れば祖父母)は相続できません。子供がなく配偶者がいる場合は3分の1、配偶者も子供もいない場合は全部を相続します。父母共に健在のときは半分ずつ分け合うことになります。
兄弟姉妹(第3順位)・・・兄弟が相続できるのは、親も子供もいない場合です。配偶者がいる場合は、4分の1、いない場合は、全部を相続します。2人以上いる場合は、均等に分けます。父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
遺留分は、相続人が財産をもらうための最低限の割合です。遺留分を持っているのは、配偶者、子供、親だけで、兄弟姉妹にはありません。遺留分権利者(配偶者、子供、親など遺留分の権利を持っている者)が、相続財産のうちそれぞれの遺留分に相当する財産を「減殺」する(取り戻す)ように求めれば、返さなければいけません。遺留分は、遺言でも変えることはできない、相続人が財産をもらうための最低限の割合です。
遺留分減殺の請求権は、遺留分権利者が相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから、1年間行わないとき、または相続開始のときから10年を経過したときも時効によって消滅します。
遺留分の計算
・直系尊属だけが相続人である場合は被相続人の財産の1/3
・その他の場合は被相続人の財産の1/2
〔例〕妻と子2人が相続人の場合、
妻の遺留分は4分の1(1/2 × 1/2)
子1人の遺留分は8分の1(1/2 × 1/4)
お客さまの推定相続人(亡くなった時の相続人になるはずの人)は、前妻との間に2人の子供、現配偶者の3人でした。子供のうち1人は、行方不明。
相続で将来もめる可能性があるとお客さまは心配されました。また行方不明者がいるので、遺産分割協議ができない可能性もあります。そこで、当事務所にご依頼があり、公正証書遺言を作成することになりました。1人の子供と配偶者にすべての財産を相続し、付言事項(※)として行方不明の子供には相続しないこと、遺留分の請求をしないでほしいと希望を記すことになりました。
ところが推定相続人の調査中に、行方不明者の住所が分かりました。音信不通の子供には、過去に財産分与がされていることもあり、遺留分として請求する相続分がないことを遺言書に明記しました。
※付言事項とは、遺言書に補足として遺言者の思いを遺すためのものです。感謝を伝え、財産を分けた理由を家族に伝えるものです。法的効力はありませんが、遺言者の気持ちを伝えるものです。
近年、放置された空き家の増加が大きな社会問題化されてきています。空き家は、全国で820万件(住宅・土地統計調査:総務省、2013年の数字)を突破し、さらに増え続ける傾向にあります。
空き家は、周辺地域に環境・防犯・倒壊の危険など様々な影響を与えています。
空き家がどのようにしてできてしまうのか、様々なケースがあると思います。空き家の発生原因の一つに相続問題があります。
複数の相続人がいた場合、特定の者に相続がさせる遺産分割協議がされたり、遺言により相続人が確定できていれば問題はありません。しかし、相続する人がいなかったりする場合もあります。また、複数の相続人間で協議が整わず共有になってしまったりすると、相続を繰り返すうちに共同所有者がどんどん増えてしまうこともあります。さらに、持分の他人への譲渡がされたりすることもあります。一つの土地・建物を処分するためには共同所有者全員の同意が必要となります(民法第251条)。人数が少ないうちは、全員の同意で売却処分することもできますが、長い期間放置しておくと共同所有者に人数も増加し手続きが困難になってしまいます。
では、こうした相続に伴う空き家を解消するにはどうすればいいでしょうか。
相続発生前であれば、遺言で相続人を指定するという方法があります。相続が発生し、遺言がない場合は、遺産分割協議で相続人を確定することです。遺言では不動産に関して、極力一人の相続人にすることが望ましいです。
相続人が明確で土地の名義変更がちゃんとそのとおりにされれば、相続による空き家は減少します。
不動産の分割で将来問題が予想される場は、被相続人が元気なうちに遺言書を遺すことが必須といえます。
自身の思いを家族に残したい時、思い浮かべるものにエンディングノートがあります。遺言書を書くのは、法律で様式が細かく決められていてかなりハードルが高く難しそう。それに比べて、エンディングノートは全く何の拘束もなく自由に思いつくまま自分の思いを書き残すことができます。しかし、遺言書と何が違うのか知っておきたいという方もいると思います。そこで、それぞれの役割と効果について考えてみます。
エンディングノートは、家族、友人への感謝の言葉、相続の仕方(少ない財産だが、みんなで分けて仲良く暮らしてほしいなど)、財産目録、葬式についての希望、自分のルーツ、友人一覧、思い出、 趣味、ペットのこと等、どんなことでも書くことができます。様式や決まりに左右されることもありません。書き手である被相続人(本人)は、自由に簡単に書き遺すことができます。家族にも思いがストレートに伝えることができるはずです。しかし、これは法的効果が全くないものなのです。
実際に、エンディングノートに書かれた通りに被相続人の思いを相続で実現しようとすると、まず、全相続人で遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成することが必要となります。遺産分割協議では、エンディングノートに書かれたことの解釈が様々出てきて混乱することもあるかもしれません。協議もなかなかまとまらないのではないでしょうか。理由は、エンディングノートに法的強制力がないからです。また、本人が本当に自分の意思で書いたという証拠もありません。ただし、被相続人本人の人柄を知るためには意味があると思います。
これに対して、遺言には、法的効果としての拘束力があります。また、公正証書遺言であれば、専門家が関与し作成されるので、相続しようとする内容についても明確です。更に、本人の意思であることが証明されています。また、原本が公証役場に保管されるので、紛失のリスクもありません。
エンディングノートにも一定の意味はありますが、相続については遺言書を別に遺す必要があります。更に言えば、紛らわしくなるのでエンディングノートでは、相続について触れないようにした方がいいと言えます。
不動産の相続は、相続人が多くなるとまとまらないことが多く、仕方なく共同所有となった場合も課題を先送りすることになります。そこで、遺言書で相続人を誰にするのかを明確に決めておくことが大事です。遺言書を作成する時、将来揉めないよう入念に検討しなければいけません。どのような遺言書を作成すればいいのか、遺言と同時に何か事前の対策をしておく必要があるのかを考えなくてはいけません。
一物件ひとりに相続することが最も望ましい方法です。しかし、被相続人の相続人に対する公平な気持ちの実現・遺留分の確保、更に、評価の高い物件であれば、相続税の支払い対策も検討しておかなければなりません。
このような場合、相談する専門家は税理士・行政書士・司法書士などになります。それぞれ専門分野がありますので、ワンストップですべての対策ができるところを探し課題の解決をされることをお勧めします。